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*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
け/獣のように

side*4

獣のように貪り合う夜は、力を持つが故の垣根も、人の姿であるが故のしがらみも消え失せる。俺だけを映す青空は時間の概念をも忘れさせ、体温は柔らかな毛皮に似て、生を享受する為に喉笛を食い千切る必要もない。「ンな顔してっと止めらんねえぞ」「誰が止めろと言った?」ただ二匹だけが此処に在る。畳む


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*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
く/苦痛と快楽

side*6

臓器を直接触れ合わせる閨事に於いて苦痛を伴うなど以ての外だ。奴の超速再生が及ばないという理由もあるが、何より愉しい方が良い。緩やかに、確実に愛でる程、釉薬で美しく色付く白磁器が心を掴んで離さない。快楽は魂を再び吹き込む。ほんのひと時だ。階級が意味を失う頃、俺達は人間に成り果てる。畳む


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*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
き/衣擦れ

side*4

始まりはいつでも口付けからである。目蓋の裏で夢を見ながら衣擦れの音を聞いていた。衣服はそう多くはない筈だが、上機嫌が窺える温かな手は、その数枚さえも愉しんでいるようだ。唇が離れると同時に青空を仰ぐ。「何だ、剥いだのは俺だけか」返礼は両手を以て、忘れられていた上着を落としてやった。畳む


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*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
か/可能性がある限り

side*6

普段は周囲に石像とさえ感じさせる奴の存在だが、よくよく観察すると其処彼処に人の姿らしい可能性を秘めている。接近により興味深く見開かれる碧の眼から始まり、その肌へ柔く牙を立てる時には温かな血の気配が全身を巡る。僅かな変化を唇で追ってやれば、やがて甘やかな熱が鼓膜から共有されるのだ。畳む


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*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
お/おいで

side*4

正体は恐らく統括官とそばかすの破面の成果だろう。何処からともなく聞こえてくる鈴の羽音が無性に夏空を恋しく思わせた。青空の主を手招いてやると、期待を秘めた眼差しでそそくさと寄って来る。ハイビスカスを抽出した紅茶は予め冷やしてある。飛び込むように口付けをすれば、南国の海はすぐそこだ。畳む


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*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
え/エロス
神話と哲学のごちゃ混ぜ

side*6

魔物の視線は黄金の矢に似て胸を打ち抜き、映り込めば忽ち虜にされてしまう。血液のように溢れ出す感情は、ただその身を求めるだけでは収まらない。それを以て奴の虚無さえ埋めてやりたいと、胸の空洞へ口付ける。「お前も肚が空いただろう」庭へ踏み入る頃、柔らかな毛足と飛膜がピタリと孔を塞いだ。畳む


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*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
う/鬱血

side*4

口付けの気配は衣服で隠れるくらいが丁度良い。例えば上腕、若しくは肩甲骨へ繋がる鎖骨端、脚ならより適当だ。奴が超速再生を持たぬと雖も、鋼皮は緩やかに回復していく。「このくらい見せつけてやりゃ良いじゃねえか」「俺が付けたものだ、好きにさせろ」不満気に膨れた頬を、柔く食むように鎮めた。畳む


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*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
い/祈り

side*6

祈りとは絶望の前に縋るもので、虚無とは絶望の後に訪れるものだ。それらより先に破壊を選んだこの身は、その深淵を知り得ない。「行き着く先は皆同じだ」魔物は俺の手を取り、柔らかな口付けを寄越す。「壊したくねえもんが出来ちまった」死の形に抗う心は、人の姿を取り戻したが故の罰なのだろう。畳む


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*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
あ/雨に濡れて

side*4

「孔が増えるんじゃねえかと冷や冷やしたぜ」黒い雨を掻い潜り、駆けて来た一頭の青い豹が牙を見せながら笑う。「可視化する濃度というだけだ」広げた翼で迎えてやると、奴は四つ脚の獣にでも立ち戻ったかのように鼻先を機嫌良く擦り付けた。そうして青空から降る口付けが、目蓋の奥に虹を架けるのだ。畳む


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*グリウル
『抱きしめ15題』
(TOY様 http://toy.ohuda.com/
15 ぎゅっと抱き合い

side*6

無条件で抱き締める事は、時に言葉よりも本意が伝わるものだ。黒髪に頬擦りをすると、奴もまた両腕を以て応えた。仔猫のようだと笑われる前に口付けてしまえば、立場は対等になる。静かな獣は戯れ合う内に、やがて成熟していく。上昇する熱により揃いの感情が交わされ、互いの身体は虚ろを満たすのだ。畳む


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