140字SS①
*ほんのりR18要素有り
お題をお借りし(https://shindanmaker.com/780366より)書き溜めていた140字SSまとめです
同ページのまま前半テスラ視点、後半ノイトラ視点で分けています
side*50
【ごちそうさま / マーキング】
主の衣服は上半身の露出が多いため、閨事での口付けにも気を遣わなくてはならない。着衣を崩しながらも、境界線は把握している。「何ニヤついてんだよ」頬が緩んでしまっていたらしい。「いえ、次は何処に口付けようかと思いまして」食前酒を零すように生白い脇腹を食む。“ごちそうさま”はまだ先だ。
【とめて、お願い / 細い体を】
しなやかな筋肉と鋼皮で固められているにも関わらず、主の身体はひどく細い。霊力を読む長い指、金のブレスレットがしゃらしゃらと遊ぶ手首、ハイヒールが映える爪先。絞られた腰を捉えたまま主の全身を思い描けば、昂りを含んだ口内に熱が篭る。頭部に添えられた大きな掌が、懇願するように震えた。
【さわりっこ / 頬が真っ赤になったから】
歯だけが残った額の仮面を主の指先がなぞる。この名残に神経が通っているのかは分からないが、直接骨に触れられているような、淡く髄が震える感覚である。「ノイトラ様も、」そっと指を滑らせたのは孔に繋がる牙の縁。自分とは違う感覚を備えているようで、短く声を上げた主の頬が真っ赤に染まった。
【そんなに求められたら… / 手のひらが覚えてる】
その痩身を包み込む感覚を、獣の掌が忘れることはない。帰刃の姿の昂りを慰める長い舌が艶々と光って、幸福な目眩に見舞われてしまう。僕が果ててなお、熟れた唇がまだ物足りないと誘い、牙に頬を擦り寄せた。そんなに求められてしまったら。獣の本能を理性で押さえつけて、愛おしい唇を指先で拭った。
side*5
【小鳥のようについばんで / 見ないふりしてあげるから】
気紛れにキスをする。従属官の慌てふためく様を見るために。小鳥のように啄んでみては離したり、口に含んでは食んでみたり。抱く時の雄の顔は何処へやら、初恋をした少女のように頬を真っ赤にしている。見ない振りをしてやろう。気紛れに背を向けた。従属官は普段より距離を置きながら、また付き従う。
【視線で果てて / 腰をよせて】
茶を淹れている横顔、対になる様に潰された右目の眼帯を眺めていると、その従属官は聡く気付きニコリと微笑みを寄越した。此方に向ける事で更に先を読んだ左目が細められ、一口含んだ茶の冷めきらぬ内に唇が重なる。口移しの熱は背筋を下り、肌が粟立つ程に恋しい。劣情のまま従属官の腰を引き寄せた。
【吐息でわかって / 真夜中に溶けた二人だから】
真夜中に溶けるふたり。節足を模した腕が獣の背に縋る。猪を思わせる巨体はそれに似合わず壊れ物を扱うように俺を抱く。たとえ引き千切られても構わない、二本、四本、六本。獣は優しすぎる。内から込み上げる感情と外から与えられる感覚が混じって息苦しい。「どうか、お楽に」真夜中に溶けたふたり。
【指先だけで / 抵抗は淑やかに】
恭しく跪いた従属官が右の手を取る。甲に口付けてから此方の様子を窺った。指先だけで顎を引き上げて、唇を親指でなぞる。勘のいい従属官は両手で指を包み込むと、そっと口内へ招き入れた。優しい霊力が指先を伝って背筋を通り抜けたことで探査神経が淑やかに抵抗を示し、咄嗟に熱くなる頬を隠した。
140字SS①
2021/06/16
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