恋愛五十音のお題
*R18要素ありお題をお借りし(創作者さんに50未満のお題 様より)Memo、途中からXと併せて更新していた140字SSのまとめです
お題セットの順はそのまま、視点は都度表記しています
あ/雨に濡れて
side*4
「孔が増えるんじゃねえかと冷や冷やしたぜ」
黒い雨を掻い潜り、駆けて来た一頭の青い豹が牙を見せながら笑う。
「可視化する濃度というだけだ」
広げた翼で迎えてやると、奴は四つ脚の獣にでも立ち戻ったかのように鼻先を機嫌良く擦り付けた。そうして青空から降る口付けが、目蓋の奥に虹を架けるのだ。
い/祈り
side*6
祈りとは絶望の前に縋るもので、虚無とは絶望の後に訪れるものだ。それらより先に破壊を選んだこの身は、その深淵を知り得ない。
「行き着く先は皆同じだ」
魔物は俺の手を取り、柔らかな口付けを寄越す。
「壊したくねえもんが出来ちまった」
死の形に抗う心は、人の姿を取り戻したが故の罰なのだろう。
う/鬱血
side*4
口付けの気配は衣服で隠れるくらいが丁度良い。例えば上腕、若しくは肩甲骨へ繋がる鎖骨端、脚ならより適当だ。奴が超速再生を持たぬと雖も、鋼皮は緩やかに回復していく。
「このくらい見せつけてやりゃ良いじゃねえか」
「俺が付けたものだ、好きにさせろ」
不満気に膨れた頬を、柔く食むように鎮めた。
え/エロス
side*6
魔物の視線は黄金の矢に似て胸を打ち抜き、映り込めば忽ち虜にされてしまう。
血液のように溢れ出す感情は、ただその身を求めるだけでは収まらない。それを以て奴の虚無さえ埋めてやりたいと、胸の空洞へ口付ける。
「お前も肚が空いただろう」
庭へ踏み入る頃、柔らかな毛足と飛膜がピタリと孔を塞いだ。
お/おいで
side*4
正体は恐らく統括官とそばかすの破面の成果だろう。何処からともなく聞こえてくる鈴の羽音が無性に夏空を恋しく思わせた。
青空の主を手招いてやると、期待を秘めた眼差しでそそくさと寄って来る。ハイビスカスを抽出した紅茶は予め冷やしてある。飛び込むように口付けをすれば、南国の海はすぐそこだ。
***
か/可能性がある限り
side*6
普段は周囲に石像とさえ感じさせる奴の存在だが、よくよく観察すると其処彼処に人の姿らしい可能性を秘めている。
接近により興味深く見開かれる碧の眼から始まり、その肌へ柔く牙を立てる時には温かな血の気配が全身を巡る。僅かな変化を唇で追ってやれば、やがて甘やかな熱が鼓膜から共有されるのだ。
き/衣擦れ
side*4
始まりはいつでも口付けからである。目蓋の裏で夢を見ながら衣擦れの音を聞いていた。衣服はそう多くはない筈だが、上機嫌が窺える温かな手は、その数枚さえも愉しんでいるようだ。唇が離れると同時に青空を仰ぐ。
「何だ、剥いだのは俺だけか」
返礼は両手を以て、忘れられていた上着を落としてやった。
く/苦痛と快楽
side*6
臓器を直接触れ合わせる閨事に於いて苦痛を伴うなど以ての外だ。奴の超速再生が及ばないという理由もあるが、何より愉しい方が良い。緩やかに、確実に愛でる程、釉薬で美しく色付く白磁器が心を掴んで離さない。
快楽は魂を再び吹き込む。ほんのひと時だ。階級が意味を失う頃、俺達は人間に成り果てる。
け/獣のように
side*4
獣のように貪り合う夜は、力を持つが故の垣根も、人の姿であるが故のしがらみも消え失せる。
俺だけを映す青空は時間の概念をも忘れさせ、体温は柔らかな毛皮に似て、生を享受する為に喉笛を食い千切る必要もない。
「ンな顔してっと止めらんねえぞ」
「誰が止めろと言った?」
ただ二匹だけが此処に在る。
こ/こねこ
side*6
俺の肩に凭れ掛かっていた黒髪の主が珍しく居眠りを始めた。これを好機とばかりに、普段の借りを返す事にしたのだ。
誤って揺すり起こさぬよう、その頭部をゆっくりと膝へ誘導する。まだ碧は姿を現さない。
白魚と共に手遊びをしていると、奴が愛らしくその身を丸めた。猫呼ばわりの口実も此方のものだ。
***
さ/サニーデイズ
side*4
天蓋の内側に描かれた青空は監視下の証であり、反して容易く破れることから虚圏本来の夜空に敵わない。
自然光の殆ど存在しない世界は今日も快晴だ。但し、それは雲の有無ではない。青空を指先に絡めると、奴が機嫌良く口付けを寄越した。
闇の中でも迷わぬその色彩こそ“空”と呼ぶに相応しいだろう。
し/周知の事実
side*6
奴が死神の主から絶大な信頼を誇る事は周知の事実だが、奴自身については思いのほか明かされていない。
白磁の唇が綻ぶ事も、白魚が熱を宿す事も、この手で触れる時だけである。
「誰もお前のようには接さぬからな」
先走る感情を読み取られたらしい。絡む碧の視線は揺らがず、固い約束を誓うようだった。
す/するり
side*4
しなやかな体躯を持つ肉食獣は僅かな隙間も苦としない。
態と空色の鬣ごと抱き締めてやると、奴は小動物のようにするりと潜り抜け顔を覗かせた。艶めく牙は上機嫌を示しており、俺の上腕や胸と擦れる感覚が甚く心地良いのだと云う。揃いの感情を寄越した返礼に、柔らかく寝かせた耳の毛並みへ口付けた。
せ/性格不一致
side*6
破面は全て、胎児のような下級大虚から自我が芽生える中級大虚を経て進化するものだと思っていた。奴が云う幸福の記憶は、その軌跡とは真逆とさえ表現しかねるほど違う。
「同族と同じ器官は胸糞悪りいもんか?」
「いや、そうでもない」
喰らう以外の役割を知ったと綻ぶ唇が、柔らかな口付けを寄越した。
そ/染まれ
side*4
「染まっちまえ」
笑みの隙間から牙が煌き、常夜が明ける。流れ落ちた蒼い長髪が世界を遮断すると、重なる唇は瞬く間に美しい夢の奥底へ叩き落とすようだ。
奴が創り出す人の世に似た晴天は甚く心地良い。
「まだ染まり切っていない」
蒼い満月が嗤う。新しく塗り替えられた夜は、溶け合う色事に相応しい。
***
た/太陽が沈むまで
side*6
本日付けの任務を終えた息抜きに、現世にて足を伸ばす。
「春が近いようだな」
天を見渡す碧の視線を追うと、奴が示す通り、時刻の割に青空が残っている。
「じゃあ陽が沈む迄ならサボっても怒られねえな」
引いた白い手が温かく感じられる程に風は冷たい。しかし、緩やかな夕暮れは麗らかに胸を弾ませた。
ち/ちゅ。
side*4
戯れは時として欲を助長する。
蒼い前髪を弾くように口付けると、眦の仮面紋が機嫌良く上がった。
「何処へでもくれてやろう」
そう持ち掛けては、奴が示すまま耳から唇、喉笛から胸元へと愛でていく。腕を伝い腹の孔へ差し掛かった頃だ。
「世話が必要だな」
表れた効果は覿面で、慰める為の唇を濡らした。
つ/月の下
side*6
三日月の細い光の中を影が横切っていく。尖らせた探査神経を掻い潜るように接近するそれは、何の事はない、最も馴染み深い存在だ。
「正面から来りゃア良いじゃねえか」
風と共に絡む白い腕に柔く牙を立てる。
「掛かった振りくらいしたらどうだ」
皮肉めいた言葉さえ、戯れ合いの切っ掛けに過ぎないのだ。
て/手を、伸ばして
side*4
牙を潜めた温かな口腔が面映ゆさを丁度隠している。喘ぐばかりの声帯は制御を忘れ、甘やかに痺れた脳には青空だけが広がっている。刹那に飛び立とうとした白い鳩は忽ち豹の牙によって息絶えた。
心地良い気怠さを振り払うのは惜しい。両手を伸ばし、俺だけを映す青空が宵闇と混じり合う瞬間を期待した。
と/吐露
side*6
石膏像に似た奴の白い身体は、俺より硬い鋼皮で守られている。その味を愉しむ為に必要なものは牙ではない。体温を分かち、臓器へ直に侵入を図る時、胸を貫く孔の奥へ言葉をぶつけるだけだ。そこに僅かな嘘も混じる事はない。
やがて感情を宿した石膏の唇が開く。互いの心はいつでも揃いの色を示すのだ。
***
な/何が欲しい?
side*4
意地悪く犬歯を見せながら、何が欲しいかと奴が問う。
「お前の孔が一つ増えるが、それでも構わんのか?」
僅かな霊圧を纏わせた人差し指で胸元を突いてやると、戯れの挑発は相殺されたらしい。
「てめえにゃ通じねえな」
背筋が凍ったと笑う唇が喉笛を食む。次は温めてやるべく、その背に両腕を絡めた。
に/ニアミス
side*6
盲目の統括官が拵えていた花見団子を三本ほど掻っ払ったのは俺だ。思わず身を隠したが、それを知ってか知らずか丁度クアトロが統括官を呼び止めた。 「ハリベルから譲り受けたものですが、此方で宜しければ」
「おお、それなら間に合うな」
胸を撫で下ろしつつも、奴へ借りを返す算段をつけねばならない。
ぬ/盗まれたもの
side*4
虚夜宮の同胞達に振舞う予定の団子が数本盗まれたと統括官がお怒りだ。空色の毛先を回廊の奥に見留めたが、大方そういう事だろう。
季節の催しには大抵、協力的な者がいくらか存在する。トレスの十刃から仰いだ裾分けを持ち、鉢合わせぬよう先回った。
奴が後にどのような面を下げて現れるか見物である。
ね/熱視線
side*6
その瞳に見つめられると、脈拍が速まりそわそわと落ち着かなくなってしまう。しかし奴はそんな俺の挙動が興味深いらしく、純粋に眺めていただけだと云う。それでも、格好がつかないからといって見るなと返すのも本意ではない。面映ゆさを誤魔化すべく早足で距離を詰め、碧を隠すように目蓋へ口付けた。
の/ノーカウント
side*4
一度目は掌で、二度目は口腔へ、三度目は腹の上にて、浴びるように濁り酒を愉しむが、それはまだ閨事の序の口だ。
「勿論こんなものは数に入らん」
取って置きの珍しい名酒を味わう為には須く段階を踏むものである。
お預けを食らい続けた末に今にも暴れ出しそうな肉食獣を、そろそろ庭の奥へ誘う時間だ。
***
は/花びら
side*6
奴が淹れた紅茶の傍に、その肌と同じ色の花弁が添えられている。
「藍染様が茶葉と併せてお取り寄せになったそうだ」
出所はいけ好かないものの甘酸っぱい香と魅惑的な花色に罪はない。
「知ってるような匂いだが、思い出せねえ」
仄かに血の気を巡らせた唇が答えた名は、そっくりに色付く罪の果実だった。
ひ/媚薬
side*4
口移しで分けた錠剤を噛み砕くと、それは胃へ辿り着くより先の粘膜から吸収される。舌下が痺れ、喉は甘ったるく渇き、やがて神経を這い回るように発熱を促した。気怠く霞のかかった脳が判別できるのは蒼い獣の存在だけである。
とうとう視線が噛み合ってしまった。攻撃的な色欲とは、春の嵐に相応しい。
ふ/震えた声
side*6
やけに効きの早い薬だ。
震えた声が俺の名を呼ぶだけで、それは鼓膜から脳まで甘く反響し目眩を引き起こす。奴を貪る事しか考えられなくなった頃、碧の視線が最後の箍を破壊した。引き摺り出された本能が急所を狙うよう仕向けてくる。邪魔な袴を一息に剥いだなら、馨る源も溢れる色欲も全て俺のものだ。
へ/ヘロイン
side*4
人の姿を保つばかりに、人間に近しい感覚が呼び起こされてしまった。肌を重ねる事で奴の少し高い体温を知った。破壊するだけではない掌の感触はいつでもありありと思い出す事が出来る。臓器を直接触れ合わせる行為は繰り返す毎に中毒性を高める。
しかし、得たものは麻薬とは程遠い現実の多幸感だった。
ほ/炎
side*6
燭台の炎をぼんやりと眺めていた。溶け落ちた蝋で台座が白く染まりゆく様は、奴の肌を思い出さずにはいられない。
「楽しいのか?」
「いいや」
炎の揺らめきに暗示でも掛けられたのか、ただその指が恋しくなると答えてしまう。真逆の体温が頬を冷やすが、醒めた脳が確信したのは安らぎに他ならなかった。
***
ま/魔物
side*4
第二階層を見るなり、まるで魔物だと奴が云う。
「魔法でも使えるんじゃねえか?」
「生憎そんな能力は持たんな」
どうも視線が合うだけで心臓を掴まれたような感覚に陥るらしい。態と見つめ返してやると、耳まで真っ赤に染めて硬直する様が癖になる。ここは魔物らしく、その精気を寄越せと囁いてやった。
み/魅惑
side*6
白く長い衣が夜風に靡いている。裾から垣間見える羽毛を蓄えた足首は一際魅惑的で、つい足元ばかりを気にしていた。
その視線は疾うに気付かれていたのだろう。
淑やかな姫君は俺を少年のようだと揶揄いながら、衣を摘み上げて距離を詰める。間近の碧と小鳥の口付けが、卑しい下心を瞬く間に改めさせた。
む/無理矢理
side*4
残留する熱と二つの脈拍で目を覚ますと、あろう事か奴は挿入したまま眠りこけている。ただ起こすのも面白くないと、内壁にて締め上げながら間近の胸を指先で突く。
「腹上死は避けた方が身の為だ」
髄を圧迫する性感は無理矢理押さえつけ、耳打ちをした。呻き声に意識が交じり、間も無く現を見るだろう。
め/盟約
side*6
口付けを繰り返す毎に交わす感情が共鳴していく。偽りのない視線が繋がった時、碧い水面に誘われるまま飛び込んだ。詰襟を解いて空洞を唇で埋めると、奴の掌もまた背面へ回りこの身を貫く孔と重なる。
肉を喰らう以外に渇きを潤す瞬間を可能にした存在から、決して離れるものかと誓わずにはいられない。
も/もっと
side*4
もっと甘いものを寄越せと奴が云う。一見砂糖とは無縁の牙が俺の指先を撫でながら、まるで仔猫のようにこの身を捕らえて離さない。
「俺を舐めても甘くなどないだろうに」
どうやら奴には俺が砂糖菓子に見えているらしい。それなら溶かして喰うのも一興だと唆してやると、牙は瞬く間に成獣へと豹変した。
***
や/約束の証
side*6
待ち合わせの為に石英の巨木へ傷を付けておいたと奴が云っていた。示された地で見留めた木は、それだけで目印になる大きさである。
「印なんか要らなかったんじゃねえか?」
「逢瀬に証は付き物だ」
木陰で口付けを交わすや否や不思議と願いが叶ったような充足感で満ち、先の疑問など吹き飛んでしまった。
ゆ/夢物語
side*4
ただ呼吸をするよりも口移しの霊子の方が美味だ。ただ屍肉を喰らうよりも共有する食卓では更に力が満ちる。それは奴の纏う青空があってこそだったのだと、長く傍に在る事で気が付いた。
人の姿を取り戻した破面とはいえ感情まで等しく持つなど夢物語だと思っていたが、この現実に清々しいほど嘘は無い。
よ/酔い醒まし
side*6
口移しで流し込まれた冷たい茶は、その主の瞳そっくりな色を想起させるような清涼感を纏っていた。
「少々濃く抽出したが、蘞味は無いだろう」
「ああ、酒より美味いかもしれねえ」
奴の手からティーカップを奪い取り、白い唇へ返礼をする。ミントの葉とは、摘んでしまうよりも触れた方が強く香るものだ。
***
ら/拉致監禁
side*4
太陽の髪色をした女が嘗ての居室に戻っていると云う。
「二度目の拉致監禁たァ良いご趣味なこって」
「早合点されては困る」
女は楽しげに現世や死神の話をした後、手製の土産を置いて嵐のように去って行った。
「で、こいつは食いモンか?」
頬張るセスタを止める間も無かったが、味は存外悪くないらしい。
り/理性の限界
side*6
理性とは名ばかりで、初めから持ち合わせていなかったのだろう。
繰り返し塗り重ねる口付けの釉薬が白磁器を美しく発色させ、白魚はしっとりと背に吸い付きながら先を求めた。擦り合わせていた兜により混じり合った白は熱病の特効薬となる。
限界を放棄する頃、一息に繋げた臓器から極楽の夢が叶うのだ。
る/ルフラン
side*4
まるで刷り込みを試みるように繰り返されるのは、甘やかな愛を示す言葉だ。
血色の良い唇が開く。返す言葉は全て、身を以て教わったものだ。気を良くした唇が俺に触れる。温かな体温を寄越されるのも今となっては馴染み深いものだ。発情する唇が俺を呼ぶ。やがて、その先で重なるものはただ一つである。
れ/冷戦
side*6
カードゲームとは単純なものであっても侮れないものだ。
先程から引く札は芳しくなく、向かい合う奴の普段と変わらぬポーカーフェイスが却って不安を煽る。黙り込んで手札を睨み付けていたが、奴が引いた一枚が最後の組み合わせだったらしい。
細やかな冷戦は終結し、気を張り過ぎだと笑われてしまった。
ろ/牢獄
side*4
虚圏とは傍から見れば悪霊が迷い込む牢獄のような所だろう。それでも生まれ、生きた記憶はこの場所だけであり、生前が何者だったかなど今となってはどうでも良い事だ。
ふと重苦しい扉のように黒腔が開くと、虚圏には無い青空が帰還する。
「お、
その色は現世よりも鮮やかで、故郷に相応しい。
***
わ/輪の束縛
side*6
白い脹脛と手首を括ったのはベルトに似た拘束具だが、所詮は人間の為に作られたものである。
「"クアトロ"は斃せたか?」
思いのほか乗り気らしい奴が揶揄うように口元を綻ばせた。
「てめえが引き千切らなけりゃな」
持ち上げた両脚を潜り、馨る急所を狙う。途端に零れた声は格別の淫靡さを纏っていた。
を/ヲトメ
side*4
閨事での拘束具とは自ら外してはならない。括られた両手が震えている事に気付いたのは、温かな掌で包まれた時だった。
「寂しくなって来ちまった」
征服する為の道具に似合わぬ初々しい言葉が耳を擽る。
「一度達してからだ。それから外してくれ」
その手が必要だと握り返した途端、下腹は熱で満たされた。
ん/「ん…っ」
side*6
淑やかに零れた吐息には、小さく艶やかな声が溶け込んでいる。指先で触れる度に白磁器の肌が血を通わせていく様は、過去から現在まで愛でた場所を全て憶えているかのようだ。
「まだお前の体温が足りん」
手に限らず、もっと近付けと奴が誘う。満を持して重ね合わせた唇は貪欲に、色事の始まりを告げた。
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2024/06/04
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