menu

月影すら見えない


 おそろしいほど整然と並んだ歯列を見せつけるように、印象的な弧を描いた。

 すべては強さである、向かうのだと、そう貴方は仰いました。しかしきっと、本当は止められないのでしょう。千切れてしまったのは貴方のこころ。儚いあまりの刃を研ぎすまして、まるで折れるときを待つかのように、僕の目には映るのです。
 ただひとつ、あの頃の"君"とは違うこと。刻まれた数字が小さくなることで矛盾した存在意義。僕たちは戦闘の為だけにつくられた。しかし人のかたちをしている。意志を持っている。生きた人間と同じものがいくらか潜在しているのだ。かつて背にトレスの数字を与えられた彼女も言っていた。それでも彼は、何を言われようともどうあしらわれようとも迷うことなく否定した。強い光を宿したまま、これ以上ないほど哀しい瞳をしていた。餓えて、餓えて、餓えて、止められる訳がない。彼が唯一信じられるのはきっと、救いを求める解号だけなのだ。そしてその先にあるものを、ただただ追い求めている。
 くるおしいほどの執着は、根本的な理解を遮断する。

 爆発しそうなほどの激しい想いは長らく胸の内に仕舞ったまま、決して口には出さない。君ーいえ、貴方のこころざしの前に立つべきではない。だからせめて、僕はいつでも、いつまでも貴方さまにいっとう近いところに寄り添うと決めたのです。最期まで、側に居られるように。

(そうして背を向けたまま貴方が瞳を閉ざしてしまっても、僕は迷わずついてゆくのでしょう)
月影すら見えない

原作を強く意識した結果
これだとテスラの片想いのようだ

NEXT← →BACK
top