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ほぼ日刊グリウルSS*2021/05

*R18要素有り
お題をお借りし(https://shindanmaker.com/780366より)1日1本ずつピクログに上げていた140字SSの5月まとめです

side*4


【理性を忘れた獣 / 汗の匂いと涙のあとと】
姿を確認せずとも、放たれる刺々しい霊圧が奴の異常を物語る。隻腕になされるがまま劣情を受け止めていたが、その様子は理性を忘れた獣だ。ひどく冷えた汗の匂いと涙の跡と。「らしくないぞ。王たる威厳はどうした」孤独になった獣の孔と剥奪の痕を埋めるように抱き締めた。指令の実行まで、あと少し。


【情けないほど動物的な / 昼間と違う】
破面として生まれ変わっても、本能というものは存在するらしい。人の姿を保ち任務をこなす昼間と違うそれは、まるで夜行性の獣が獲物に忍び寄るかの如く。「てめえがここまで貪欲だとは、誰も気付かねえだろうな」それを理解し見抜くのもまた獣。情けないほど動物的な衝動に身を任せ、その種を欲した。


【もうすぐ朝が来る / はじめてだから】
初めてだからと言って別段思う事は無いが、経験の乏しさに多少身の強張りを感じていた。それを悟ったのか、奴はまるで柔い女の相手をする様にゆっくりとこの身を溶かしていく。壊すばかりでない側面を知った。たっぷりと時間をかけて愛を受け撃ち落とした白い鳩が飛び散る頃、夜が明けようとしていた。


【二人きりになったので / 髪が乱れるその理由は】
二人きりになるや否や奴が腕力に物を言わせて俺を頭から掻き抱く。髪が乱れるのもお構いなしで、まるで小動物でも愛でるかのよう。その掌は仮面まで及び、口付けた角の先端を食んでくる。頭骨に直接触れられているようで妙な感覚であるが悪くはない。ふと思い立ち、空の髪が掛かる右頬に手を伸ばした。


【明日は互いに知らん顔 / 絡めて】
奇しくも明日は奴と共同での任務が命じられている。十刃二人と言えども、手分けし効率よく回らなければ完遂が難しい内容である。「折角てめえと二人なのによぉ」「明日は互いに知らぬ顔で持ち場の調査に入るぞ。その代わり、」口を尖らせた奴の耳へ届くよう首に腕を絡めて、帰還後の楽しみを提案した。


【指先だけで / 互いの肉がぶつかる音】
二人きりの閨を満たすのは、言葉にならない嬌声、熱を帯びた吐息、互いの肉がぶつかる音。その行為は獣の様に本能的で、人間の様に貪欲だ。最中に奴が指先だけで胸の孔に触れてきた。中心部ほど外気に晒されない臓器の如く敏感で、髄が震えて身が跳ねる。奴が味を占めたとばかりに胸元へ喰らい付いた。


【溶けてなくなれ / 勝手に動いて優しく誉めて】
奴が従属官達を連れ現世へ物見遊山に行ったらしい。少々面白くない心持ちでいると、土産を手にした奴が楽しげに訪ねてきた。それは壺入りの水飴で、スティックキャンディの様に巻いて食うのだと云う。差し出された飴を一口含むと、砂糖とも蜂蜜とも違う甘味が、後ろめたさを絡め取り溶けてなくなった。


【直視できない / 高くから落ちていくような浮力が体をおそって】
奴が体内で果てる時、顔を直視できない程きつくこの身を抱き締める。同時に与えられる口付けはゆったりと甘く、高くから落ちていくような浮力が体を襲って、頭はふわふわと夢見心地である。「もう少し、このまま」途切れてしまうのが切なく零れた言葉は、情欲の再燃を促した。蜜月はまだ終わらない。


【ピロートーク / 決まったように】
一頻り身体を重ねた後、奴は決まったように腕枕を買って出る。身を任せると、額を擦り寄せて甘噛みのようなキスを寄越した。「猫にそっくりだ」「良いだろ、甘えさせろよ」大きな猫科の肉食獣はまだ構い足りないらしい。「喉でも撫でてやろうか?」「鳴らした覚えはねえが」冗談を投げては笑い合った。


【まだ本気じゃないよ? / 人に隠れて】
人目につかぬよう虚夜宮から遥か遠く離れて密会をした。そこは砂漠の果てかの如く、小型の虚の気配すら感じられない。豹王が蒼い長髪を靡かせて誘い、白い衣を魔物の姿に変えて奴の肩へ飛んだ。「このまま地獄へ連れてってくれよ」「俺は使者ではないぞ」ふたり戯れ合うこの場所は、極楽に他ならない。


【いきなり、そんなところを / あ、やばい】
背を抱いた獣の指先が不意を突き、翼の根本を覆う羽毛に潜り込んだ。その感覚は耳の裏にでも触れられている様な、擽ったくも仄かに性感を刺激して肌が粟立つ。「あ、やべえ。やめらんねえな」触り心地が甚く気に入ったらしい。堪らず翼がきゅうと萎むと、異変に気付いた奴が嬉々として背を撫で付けた。


【吐息は言葉の湯気 / 汗の匂いと涙のあとと】
狂おしく抱かれる夜は、目に映る何もかもが幻想的な霞で満ちる。言葉を紡ごうとしても、それは熱に浮かされた吐息に変わり湯気のように消えていくばかりだ。戦闘時とはまるで違う汗はフェロモンの如く互いを惹き付ける。やっとの思いで奴の名を呼ぶと、その指が零れ落ちる涙の軌跡を愛おしげに拭った。


【えりあしの匂い / お見舞い】
奴の怪我を聞きつけて見舞いに参じたが、当の本人は言葉を発するより先に鼻を上げて息を吸う。嗅覚が導く先は、俺の襟足の辺りだ。「甘い匂いがするぜ」「ああ、先程フリージアの束を担いでいたからな」玉座の間を飾る指示があったのだと続ける。「見舞いの花でも貰った気分だ」奴が嬉しそうに笑った。


【ここが良い / もう我慢できない…!】
愛撫する奴の指先は巧妙で、受け入れるこの身を万全の状態に仕立て上げる。そうして共に過ごした夜の数だけ空を色濃く映した。何処が良いかと問われれば如何なる部位でも反応を示し、我慢ならぬ衝動が目覚める頃には二人一緒に上りつめる。合わせ鏡の視線がぱちりと重なると、相愛の言葉が溶け合った。


【後ろからハグ / 忘れられない体にしてよ】
その膝は特等席だ。後ろから抱き締められ、少し体温の高い腕の中に身を委ねる。「体は温けえのに手が冷てえ」黒い爪を擦りながら奴が云う。「そうか?冷え性ではないのだが」「ちょっと握れば温まるんじゃねえか?」大きな掌に包まれると、途端に熱が動脈を駆け抜けた。そのぬくもりを忘れる事はない。
ほぼ日刊グリウルSS*2021/05

2021/06/01

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