ほぼ日刊グリウルSS*2021/07
*R18要素有りお題をお借りし(https://shindanmaker.com/320966より)1日1本ずつピクログに上げていた140字SSの7月まとめです
side*6
【もしかして、妬いてる?】
特徴的な高笑いの主がクアトロと話をしているようだ。奴は此方の存在に気付いていたらしく、擦れ違う長身の陰から姿を見せる。「ノイトラと何話してたんだ?」「女の様子を訊かれてな。何だ、妬いているのか?」「ち、違げーよ!」図星を取り繕いながらも、その意識が此方へ向けられたことに安堵した。
【なにも欲しくなんかないよ】
月末の誕生日に欲しい物はあるかと問われた。奴からそんな話を振られるとは予想外で、途端に気持ちがふわりと浮いて大真面目に考えてしまう。「そうだな、てめえが居るなら何もいらねえ」「何故だ?」首を傾げた奴の腕を引いて抱き締めた。欲しい物など霞むほどに、傍に在る者によって満ち足りている。
【君がくれる痛み】
チクリと肌を刺すのは奴の口付けだ。鋼皮に痕を付けるにはそれなりの力が必要で、この時ばかりは階級の差を素直に享受する。肩口に埋められていた顔が離れると、痕を隠す様に白い手が上着の襟を正した。「今は良いじゃねえか」「何となくだ」悪戯を誤魔化す少年の仕草が愛らしく、その唇に返礼をした。
【手を握る】
自らと同じく黒の体毛に覆われた指で俺の掌を揉みながら、サリサリと毛並みを梳く爪が心地良い。「耳と似ているな」「それも中級大虚の名残だろうよ」笑って奴の掌を握り返すと、作りは似ているものの毛並みはふわりと柔らかだ。両手で包み込めば、素肌とは違う獣の体温が寄り添う夜を安らかに深めた。
【ただの強がり】
「気掛かりがある様だな。後は我々だけでも完遂出来そうだが」任務の最中、胸の内を見破ったウンデシーモの従属官が代替案を示す。「いや、最後までやるぜ」監督と報告の責務があるなどと歯の浮く様な理由を付け加えたが、紛れもない動揺と強がりだ。碧の軌跡は目蓋の裏に。溜息を吐いて立ち上がった。
(ウルキオラ目線【もしかして寂しかったの?】と繋がる話)
【隠しきれない】
長い衣を解かぬ儘、抱き寄せた薄い胸板に指を這わせる。跳ねる翼が緩く風を起こすとき、獣の爪が掻いたのは布越しに隠しきれない小さな性感帯だ。階級を奪う癖が染み付いた唇は迷わず奴の左胸を狙う。ざらつく舌が味わうほどに透ける先端が熟れて、零れ落ちる声が鼓膜に吸い付いては理性を麻痺させた。
【上目遣いの反則】
シャーベットが火照った身体を冷やし、ラムネの風味を閉じ込めた氷は喉越しも爽やかだ。「それは何だ?」「アイス。食ってみろよ」一掬い奴の口に含ませると、白い喉が美味そうに鳴って緩く波打つ。「もう一口」距離を詰めてきた上目遣いに魅了され、気付けば操られるようにスプーンを差し出していた。
【遠い日の約束】
在りし日に、半透明の枝の隙間から話しかけた事を憶えているかと問うた。「ああ」短い返答の後、破面として初めて出逢った時には、この眼を見ただけで豹の中級大虚を思い出したと云う。それは、また来る、と杜を出た後の事だった。果たされた約束はそれ以上のものになり、交わす言葉は愛に変わった。
【真面目な顔で爆弾発言】
「反膜の匪の閉次元ってよ、中はどうなってんだ?」下級の破面に使用しても帰って来ない為、どのように閉じ込められるのか疑問だ。「存外快適だぞ。ただ、暇で昼寝をしていても時間きっかりに追い出される」そう答えた奴は至って真面目な顔だが、現世のナントカ喫茶のような仕様に動揺を隠せなかった。
【ほっとした顔】
奴が珍しく転寝をしていたが、何やら魘されている様子に思わず肩を揺する。ゆるりと現れた碧が俺を映すと、その顔はどことなくほっとしたような表情に変わった。「悪い夢だ」同族達から返り討ちに遭い、地平線から青空が消える夢だと云う。「てめえも俺も此処に居るだろ」曇りを払うようにキスをした。
【濡れた唇】
伏した碧い眼が手元の活字を追う様をぼんやりと眺めた。右手はページを捲り、左手はアイスティーのカップに添えられている。その視線が紅茶の水面に移り一息に飲み干すと、濡れた唇が艶々と光ってまるで誘うようだ。思わず顎を引き寄せて奪えば、茶葉に混ぜ込まれたライムの香りが爽やかに鼻を擽った。
【もしかして、妬いてる?】
オレンジの髪の死神から受けた傷を気にしていると、盛り上がった鋼皮をなぞる指先を白い手が遮った。「俺からも拵えてやろうか」鎖骨の窪みを黒い爪が突き、普段とは違う背筋が凍るような上目遣いだ。「冗談だ」それは一瞬の事だったが、背けた碧を追い掛けて詫びのキスをする。奴は時に嫉妬深いのだ。
【煩い心臓】
その白い身体を抱くとき、煩いくらいに高鳴る鼓動は奴への激しい感情を表すようだ。聡く感じ取った奴の掌が、心臓の真上にぴたりと触れた。「これも心か?」「ああ、分かりやすいだろ?」脈の振動が伝わる程に抱き締めると、対の心臓も早鐘を打つ。心地良く重なり合うそれは、共鳴するふたりの恋心だ。
【「お前なぁ……」】
先日の遅刻の際、悩ましい起こされ方の所為で奴と二人の時間を取る迄は何も手に付かなかったと訴えた。「てめえはよォ……そういう所が、」「不服か?」当の本人はケロリとしていたが、不意に距離を詰めた唇が続ける。「ただ揶揄った訳ではないぞ」見返りの口付けは優しく、綻んだ碧がその先へ誘った。
(ウルキオラ目線【朝寝坊】と繋がる話)
【うそつき】
白蛇の死神は時に細やかな嘘を吐く。組まれた天気は事実と逆に伝えられ、白雨が砂漠を覆う。外出の予定が潰れて苛ついていると、白い手が肩を叩いた。旬のアプリコットティーを共にどうかと愛らしく傾げた黒髪が揺れる。「仲良しやねえ」気分は一転晴れやかで、遠巻きに笑う声は聞こえない振りをした。
【ゆびきりげんまん】
華やかな菊花細工が施された角砂糖は、甘い口付けと共にほろりと溶けた。約束通り奴は傍に在って、陶磁器の唇がローズヒップを滲ませたようにほんのり色付いている。「ずっと続かねえかなあ」満ち溢れた幸せが言葉になると、奴が小指を差し出して云う。「勿論だ」指先を失くさぬように、きつく絡めた。
(7/31 グリムジョー誕)
ほぼ日刊グリウルSS*2021/07
2021/08/01