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ほぼ日刊グリウルSS*2021/08

*R18要素有り
お題をお借りし(https://shindanmaker.com/447736より)1日1本ずつピクログに上げていた140字SSの8月まとめです

side*4


【媚薬】
盛った薬を二人の唇で分けると、即効性の劣情は俺達を獣に変えた。欲に濡れた青に射抜かれただけで、髄が甘く痺れて竦む。喉笛を喰い潰された獲物のようにこの身を委ねれば、後は極楽の夢に溺れるだけだ。血中濃度は上昇を続けている。口付けの合間さえ惜しんでは、焼けるような切先をより奥へ誘った。


【息も絶え絶え】
果てた後の小休止。俺の腹部を舌で小刻みに擽る様は、まるでミルクを飲む仔猫だ。蒼い耳を撫でながら愛らしいと思ったのも束の間で、ざらつく舌先が臍を掬うと、過敏に仕立て上げられた神経は容易く下腹の皿を再び満たした。息も絶え絶えに奴の名を呼ぶ。漸く見えたその表情は、肉食獣そのものだった。


【もう溢れてしまいそう】
俯いた顔が上がると血色の良い頬を伝う汗が一雫、胸の孔を濡らす。「駄目だ、抜いたら…」満ちた熱が溢れてしまいそうで、退きかけた奴の腰を抱え込んだ。「安心しろ、終わらねえよ」空を見上げた途端に揺れる吐息が鼻先に落ちて、途切れた言葉を奪う。刹那に磨がれた切先が、この眼に火花を見せた。


【慰め合う】
興奮状態にある奴の源を慰めるべく、先端に始まりのキスをする。口内に熱が籠れば、視界の端で空色の髪が降る様に揺れた。不意に奴が身体を捻り真下に潜り込むと、抱えられた腰が甘く痺れ手が止まる。その姿は宛ら二つ巴だ。うねる舌はあまりに巧妙で、喘ぐ事しか叶わぬ身が蕩けそうなほど打ち震えた。


【限界まで焦らす】
立てた膝のその奥にて。すんでの所で進入を阻止したまま口付けをする。態と擦れる音を立てながら、奴へ暫しのお預けを試みた。加速する呼吸は互いの唇を潤して、僅かな隙間も許さない。右頬の牙を食んでやれば肌は粟立ち、空色が恨めしそうに見上げている。戯れは仕舞いだ。額を合わせて合図を囁いた。


【上目遣い】
奴が俺の上目遣いは罪深いと云う。此方としては身長が劣る上で動作を最小限に抑えているだけだが、魔法にかけられたような心地らしい。ならばとその胸ぐらを引き寄せて真っ直ぐに見つめてやる。「同じではないか」「駄目とは言ってねえよ。これは、」俺である事が一番の魔法だと、間近の唇が明かした。


【誘う目線】
立秋を境に雨が冷たい空気を運んできた。少々肌寒く感じたものだから、奴の肩に寄り添ってその腕を湯たんぽのように抱く。当の本人は、この動作の真意が見えぬと空色の眼をぱちくりさせている。「もう少し温めろ」誘う目線を送れば両の腕に引き寄せられて、熱いくらいに鼓動を刻むその懐へ身を委ねた。


【「俺のものだ」】
奴と揃いの浴衣に身を包んだ今日は、細やかな祭りの日だ。モノクロで出来た虚圏の夜空にひとときの花火が鮮やかに散った。同胞達が空へ気を取られている隙に、蒼い仮面紋が楽しげに上がる横顔を密やかに眺める。その姿を独占しているような高揚感で、ついつい緩む口許を団扇で隠し視線を空へ戻した。


【服を脱がせる】
奴が俺の服を脱がせる時は決まって詰襟を開く所から始まる。胸元の孔を唇と背に回った掌が塞ぐが、上衣は纏った状態だ。その唇が腹部へ下りる頃、既に帯は引き抜かれている。「何故上衣は残すんだ」「ケツだけ隠れてエロいから」真顔で宣う理由に呆れたが、あまりに素直で反論する気が失せてしまった。


【コスチュームプレイ】
祭りの日、花火が終わっても俺達は浴衣のまま戯れ合っていた。この身を抱き締める孔の無い胸元から駆け足の鼓動が聞こえる。身に付ける物が変わるだけで感情が昂る事を知った。衣擦れの音と共に衿は肩から落ちて、奴が「綺麗だ」と息を呑む。思わず袂で顔を隠そうとしたが、口付けに遮られてしまった。
(【「俺のものだ」】と繋がる話)


【キスをねだる】
その唇が愉しげに弧を描くとき、此方も釣られて頬が緩む。その唇が怒りに震えるとき、俺の指先で鎮める。その唇が食い物を貪るとき、共に味見をする。感情に満ちた奴の唇は胸元の孔を心地良く疼かせて、もっと欲しいと背伸びをする。閉じていた目蓋を開くと、艶々と濡れたその唇が照れ臭そうに窄んだ。


【「今日は私が」】
支える奴の胸に身を委ねて、先走りを絡めた自らの指先で体内を整える。仮面の角から髪を撫で、背を摩る大きな手が心地良い。それでも、自身だけでは届かぬ場所がある。「おい、もう良いのかよ?」「お前のが欲しくなった」切先を焦点に合わせ一息に腰を落とせば、髄から頭頂まで貫く電流が駆け抜けた。


【無抵抗】
奴と共に過ごすようになってから事に及ぶ際は至って自然で、抵抗する気など端から起きなかった。その腕が破壊したのは、抱き締めた僅かな隙間と身の強張りだけだ。今では口付けの瞬間から力が抜けてしまい、抵抗の余地なく溺れて沈む感覚である。奴に話すと、その懐へ照れ隠しの様に囚われてしまった。
(グリムジョー目線【溺れてしまう】と繋がる話)


【欲情】
湯上がりに掻き上げた空色の髪は水分の重みで真っ直ぐに纏まり、がらりと印象が変わる。水も滴る何とやらとはよく言ったものだ。髄が震えるのを隠してその姿に見惚れていたが、視線に気付かれてしまう。「物欲しそうじゃねえか」「何の事だ」上辺だけの誤魔化しは見透かされ、嬉々として唇を奪われた。


【甘い痛み】
初めて肌を重ねた日のことだ。受け入れる痛みは、戦闘時とはまるで違う甘く痺れる感覚を併せ持つ。見上げる空の色と声が、夢見心地の脳髄へ羽根が降り積もるようにふわりふわりと確実に刻まれていく。知らぬ感情の雫が仮面紋をなぞるとき、食む唇は温かく、覆らない筈の虚無が埋められていく気がした。
ほぼ日刊グリウルSS*2021/08

2021/09/01

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