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ほぼ日刊グリウルSS*2021/12

*R18要素有り
お題をお借りし(https://shindanmaker.com/613463より)1日1本ずつピクログに上げていた140字SSの12月まとめです
ウルキオラ誕に沿った話は月を跨いで全3話
11月末の6目線【黒衣】→12月の4目線【触るな!】→12月の6目線【睡眠不足】の順にご覧頂くと何となく繋がります

side*4


【触るな!】
オレンジとスパイスが香る手製の温かいワインで、気が大きくなったようだ。「まだ触れるなよ」今日は俺の望む儘、易々と組み敷いた奴の腹へ跨った。重ねた唇は、ワインに混ぜ込まれた蜂蜜のように甘やかに蕩ける。「正夢みてえだ」「衣装は無いが大目に見てくれ」二人笑い合う夜は、何物にも代え難い。
(12月1日 ウルキオラ誕、11月末のグリムジョー目線【黒衣】と繋がる話)


【だってしょうがないじゃない】
掛布が厚手のものに変わり、更に毛布が加わった。頭から被る奴の姿は、冬毛を蓄えた熊のようだ。「だってしょうがねえだろ、寒みィんだから」寒さは苦手ではないが、すぐ冷えるからと冬毛のかまくらに引き込まれてしまう。「確かに、よく眠れそうだ」閉じ込めた温もりは、鼓動と共に髄まで沁み渡った。


【猫みたい】
発情期を迎えた猫のように目当ての空色へ擦り寄ると、息を入れる間も無く答えが返ってきた。奴は猫扱いをすると怒るが、先に此方から猫に似せて振る舞う事で、喉を鳴らし口付けを寄越すようになる。手放しで甘えたい欲求は時に少々面映ゆい。自由な猫の習性を借りて、互いの縄張りを緩やかに解くのだ。


【休息するのも、仕事の内】
命じられた任務及び付随する業務や片付けまで確実かつ迅速に遂行することは、厚い信頼に繋がる。猶予のある指令にまで手をつけようとした所だった。「ウルキオラ、てめえ最近寝てねえだろ」やけに眩しい空色は、脳の覚醒に隠れていた肉体疲労に気付かせる。ひと時の休息を、奴の手に委ねることにした。


【ピンクの】
ショッキングピンクの錠剤は一目でオクターバの科学者が作ったものだと分かる。「色で信用を落としているな」死神の主にも認められた補肉剤である為、怪我を拵えたセスタが渋々口へ放り込む。「脳の作りが違うんだろ」誉めているのか馬鹿にしているのか判断を迷っている内に、奴の裂傷は塞がっていた。


【願い事をしたためて】
奴が纏う青空は、暖かく眩しく感情を揺さぶる。眼に見えぬものを論理的に理解する為に、いつからか日記をつけるようになった。導く者の居ない教会で予測不可能な未来を約束した今日も、ペンを取る。筆跡は軽やかに、やがて埋まるページは強い願い事がしたためられた、自分らしからぬ言葉で満ちていた。
(グリムジョー目線【結婚式】と繋がる話)


【孤独に怯えて】
胸が締め付けられるほどの息苦しさは、微睡みと覚醒の狭間で、だだっ広い自宮の天井が映り込んだ時に起こる。青空がひどく恋しい。「俺は弱くなったのか?」「戦闘は寧ろ磨きがかかってるぜ。ただ、」こうして奴に逢いに来たことが答えだと云う。抱き締められた腕の中で、痞えが下りていくのを感じた。


【ゴミ箱の中】
慌しさの合間を縫って、久し振りに第六宮へ訪れた。何気なく寝台へ腰掛けた時、独特でよく知った匂いが仄かに鼻を突く。「何だ、言えば手伝ってやったんだがな」「忙しかったろ…っつーかゴミ箱漁るんじゃねえ!」その点には些かプライドがあるらしい。真っ赤になった耳へ、そっと誘惑の口付けをした。


【身長差】
覆い被さるように屈んで寄越す奴の口付けが好きだ。大きな猫を囲う気分で丸めた背に腕を回すと、美味そうに唇を食んでくる。一頻り交えた後に奴が背筋を伸ばしても、追い掛けるべく踵を地から離した。まだ足りぬと啄めば、俺の背をきつく抱え込んだ両腕は宛ら親鳥の羽毛だ。そして身長差はゼロになる。


【割れたカップ】
陶器が派手に割れる音と共に、尾を踏まれた猫のような悲鳴が台所から聞こえた。様子を窺うと、奴が気まずそうに空色の髪を掻いている。「それは元々欠けていたからな」「いや、落としちまったのは、」「新しいものが出せるだろう」宙を迷う手を取り、淡い青と金の縁取りが入ったティーカップを渡した。


【雨宿り】
虚夜宮の敷地へ踏み入れた途端に降り出したのは霙混じりの冷たい雨だ。「こんな面倒臭ェ天気なんか創りやがって」セスタの苛立ちがピークに達する前に、暫し軒下での休憩へ誘う。「雲の動きは予定通りだ」暗雲の切れ間は近いと指を差し傍へ寄り添えば、眉間の皺は和らぎ、大きな手が角の水滴を拭った。
(グリムジョー目線【嘘】へ常がる話)


【ピジョンブラッド】
玉座の間にて小間使いの破面達へ指示を出し、ステンドグラスを祭壇のように配置する。「硝子の癖に宝石みてえだ」冷やかしにやって来たセスタだが、存外感心したらしい。「あながち間違いではないぞ。一部ルビーが嵌め込まれているそうだ」くり抜くなよと冗談を投げながら、真っ赤な鳩の目を示した。


【おとぎ話の主人公は】
側近の少女達が賑やかに話している。「この赤い靴、藍染様から頂いたの!」舞い続ける事さえ厭わないと、ツインテールの少女はこの上ない幸せに満ちていた。クリスマスの夢から覚めても、青い鳥は誰しも身近に存在するものである。「グリムジョー」呼声で上がる眦の仮面紋は、正に青い羽根の様だった。
(12月25日 クリスマス、赤い靴と青い鳥)


【アラバスター】
奴が俺の頬に触れながら、石膏のようだと云った。表情の乏しさ故かと問うと、整った彫刻に近いと云う。そうして奴の手は命を吹き込む技師宛らに感情を刻み付けていく。心地良い施術は、声に抑揚を生み出し、頬を緩ませた。「ちゃんと笑えるじゃねえか」石像を人肌に変えたのは、紛れも無い奴の体温だ。


【鏡に映った その姿は】
鏡に映ったその姿は、あまりに淫らで目を背けてしまう。奴は態と俺の脚を開き、繋がる境界線まで映り込むよう仕向けた。囚われた腕の中に一縷の逃げ道も無い。「見苦しくは、ないか?」「まさか。すげえ興奮する」体内を抉る切先は熱く全身を裂くようだ。面映ゆい源へ触れぬ儘、奴の身まで白く汚した。


【凍えた指先】
空色の髪に雪を乗せた儘、奴が任務から帰還した。獣のような身震いで振り落としている所へ赴くと、常に温かい筈の指先はすっかり凍えてしまっている。「てめえの方が温けえなんざ初めてだ」「熱湯でもかけてやろうか」叩く軽口は強張った頬を緩め、その手を温める機会を逃すまいと両の掌で包み込んだ。
ほぼ日刊グリウルSS*2021/12

2022/01/01

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