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ほぼ日刊グリウルSS*2021/12

*R18要素有り
お題をお借りし(https://shindanmaker.com/613463より)1日1本ずつピクログに上げていた140字SSの12月まとめです
ウルキオラ誕に沿った話は月を跨いで全3話
11月末の6目線【黒衣】→12月の4目線【触るな!】→12月の6目線【睡眠不足】の順にご覧頂くと何となく繋がります

side*6


【睡眠不足】
会議中の欠伸を噛み殺す。隣のセプティマに睨まれ、斜め向かいで船を漕ぐプリメーラを羨んだ。今朝まで共に過ごしたクアトロは既に平常運転である。解散の号令で伸びをした所に、奴がそっと耳打ちをする。「礼がしたい」その夜、カモミールの香と白い手に包まれ、再び見る夢は深い眠りの水底へ消えた。
(ウルキオラ目線【触るな!】と繋がる話)


【猫がなく】
「にゃあ」此方の理性を吹き飛ばすことを確信した鳴き真似と共に、奴が口付けを寄越した。碧い眼を持つその黒猫は、堂々と膝の上を占拠する。「“猫”にそっくりだろう?」「ああ、“寝子”は鳴くもんだ」一息にその身を転がせば、込み上げる劣情を隠す必要は無い。黒い爪に招かれる儘、帯へ手を掛けた。


【朝まで付き合え】
小休止の口付けを終えると、碧の水面がうっとりと揺れる。切先は埋めた儘だ。白魚の指先で俺の髪を梳きながら頬を寄せ、熟れた唇が囁いた。「溶けてしまいそうだ」扇情的な台詞と耳を炙る吐息は、容易く再熱を促す。「朝まで付き合え」急な圧迫で跳ねた脚を抱え込み、逃げられぬよう指をきつく絡めた。


【猫のようにしなやかに】
奴の小柄な身体は非常に身軽で、効率を重視した動きは猫のようにしなやかだ。それは戦闘時だけではない。狭い場所を苦としない黒猫は、何の違和感も抱かせず俺の懐へするりと滑り込む。その碧の瞳いっぱいに映された時には既に、髪を食み口付けをしなければ気が済まないほど絆されてしまっているのだ。


【結婚式】
最初は単なる戯れだった。広大な虚圏には時折、過去の建造物が風化せず残っている。試しに踏み入ったのは、教会に似た廃墟だ。ままごとの口付けを交わし、うねる石英の枝を指輪に見立てて奴の白い薬指を飾る。破れた天井から雲を払った月光が差し込むと、祝福を受けたように不思議な自信が満ち溢れた。


【さようなら】
「然様ならば俺が預かりましょう」統括官との話を終えたクアトロは、そばかすの破面と共に戻って来た。「東仙の奴、買い物か?」「プレゼントの中身をクリスマスまで伏せられたいそうだ」そいつは俺に気付くなり奴の背後へ隠れてしまう。当日の雑念を見透かされた気がして、純粋な瞳から目を逸らした。


【憧れの】
プリメーラの階級を手に入れたいと戦い続けた事もあった。数字に見合う力を持ち、大いに認められ、刃向かう者もない地位は、さぞ心地良いだろう。しかしその場合、クアトロを想うと思考が止まる。序列の変化により、奴との関係が狂う事が恐ろしくなってしまった。セスタで居るのもそう悪くは無いのだ。


【白衣】
クアトロが持つ白衣は、オクターバの研究室を訪れた際に薬品等の付着の危険性はないため譲り受けたものだ。普段の衣服では似合わないと、面白半分で奴の白い肌に直接白衣を重ねる。「お前、時々妙な嗜好が見えるぞ」思わず突っ伏した頭頂部へ呆れた声が降り掛かるが、その姿はあまりに刺激的だった。


【あつい】
熱い湯が冷えた身体に沁み渡る。厚手のタオルで拭った雪解けの頬に口付けると、蘖が芽吹くように開く碧は冬である事を忘れさせた。恋の病は重篤で、懐に閉じ込めてなお足りぬと肌を寄せる。「夏空に抱かれているようだ」落ちた玉の汗を掬い、奴が冗談めかして微笑った。暑い季節はいつでもここに在る。


【抱き締めても良いですか】
虚夜宮の空に分厚い雲が現れ、砂漠に似合わぬ雪が降り始めた。海とも乾燥地帯とも違う真っ白な虚圏の砂は既に雪原のように見える。奴はというと、嘗ての拠り所とよく似た白い世界を興味深く眺めていた。強まる風雪が窓を鳴らす。その白い身体が攫われてしまいそうで、声を掛けるより先に腕を伸ばした。


【嘘】
先程までの雨が嘘のように上がり、奴が示していた雲の切間から見慣れた青空が覗く。「そう長くは続かんだろう。今の内に戻るぞ」寒い上にまた濡れるのは勘弁だ。「早く着替えてえな」「温かい紅茶でも淹れよう」湿った髪を掻き上げながら、翻る燕尾を追う。苛立ちはいつの間にか楽しみに変わっていた。
(ウルキオラ目線【雨宿り】と繋がる話)


【何度でも】
超速再生の白い肌から口付けの痕が消える度、何度でも繰り返す。それは新雪に足跡を残す子供のように飽く事は無い。日付が変わる頃、碧の水面の薄氷は溶け、熱を湛えた唇が贈り物をねだる。「俺も貰うぜ」待ち合わせは樹氷の奥の庭にて。互いの望みは一つに混じり合い、吐息さえ惜しんでは唇を重ねた。
(12月24日 クリスマスイブ)


【パイプ】
宮内の暖まりが悪い。暖房のパイプラインを覗くと、どうやら小型の虚が迷い込んだらしい。腕を突っ込み格闘していたが、横から現れたクアトロがここぞとばかりに猫じゃらしを取り出す。「何でそんなもん持ってんだよ」「お前に…いや、飾りだ」問い詰めるより先に、鼠の虚がパイプの口から飛び出した。


【あー…可愛い。可愛いね。】
炬燵とは、一度入ると抜けられなくなる魔力を秘めている。奴ですら呑まれてしまう光景を、いま目の当たりにしていた。「グリムジョー、その猫は…お前だ…」妙な寝言を零す唇はふわりと温かく、白い頬は茹でた餅のようである。「あー…可愛い」思わず漏れた溜息と共に、美味そうなその肌を柔く食んだ。


【不意打ち】
それは口付けをした瞬間だった。不意打ちで鳴り始めた鐘は、セグンダの十刃が従属官達へ命じた催しらしい。「数えるのは煩悩ではなさそうだがな」事情を知るクアトロに教えられたが、一定の間隔で響く音は気を散らしてしまう。日付が変わってからでも遅くはないと、頬を擽る白い唇が不機嫌を和らげた。
(12月31日 大晦日)
ほぼ日刊グリウルSS*2021/12

2022/01/01

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