ほぼ日刊グリウルSS*2022/02
*R18要素有りお題をお借りし(https://shindanmaker.com/200050より)1日1本ずつピクログに上げていた140字SSの2月まとめです
side*6
【軽く 髪を引っぱる】
震える指先は俺の髪を力なく引っ張るが、階級の側で飴玉のように膨れた性感帯はまだ味わい足りない。舌先を擽る芯は癖になる感覚で、軽く牙を立てることで降り掛かる声が旨味を上乗せするようだ。更にひとつ、馨りが加わる。余韻に蕩ける碧の塩飴を口に含むと、取っておきの水飴に舌舐めずりをした。
【おそるおそる 張り倒す】
不快な羽音の主を反射的に張り倒した。「そいつは録霊蟲じゃないか?」掌で潰れたものを恐る恐る視界に入れると、共に覗き込んだクアトロが不吉な名称を口にする。近頃好調なクインセの従属官を思い出すと同時に、指先で蠢く違和感に背筋が凍った。第八宮まで奴に同行を頼み込んだ事は言うまでもない。
【公衆の面前で 傷口を舐める】
情報共有の為とはいえ、公衆の面前で眼球を壊すのが気に食わない。奴の再生能力は理解しているが、その眼窩を埋めるように口付けをした。「そう舐めずとも治る」「何度も潰したら印が追いつかねえだろ」開かれた儘の涙腺を狙う。やがて再構築された角膜が舌先に反応し、湛える最初の涙を我が物にした。
【切なげに おしのける】
切なげに降る声の方向へ、獣に近付いた耳を動かす。脚を撫でながら長い衣をたくし上げにかかると、面映ゆさに滲む白い手がやんわりと抵抗を示した。奇しくも背徳感の裏には恍惚が隠れているものだ。絡めた指で妨害を捕らえ、鼻先で裾を押し退ける。はためく翼はフェロモンを運び、馨る源に唇を寄せた。
【切なげに 抱き合う】
それは罪人へ科された罰のようなものだろう。腹部を貫く孔が切なく疼いて仕方がない。咄嗟に白い手を引き寄せると、抱き合うふたつの身体は互いの傷痕に栓をした。「お前のそれも、涙のようだ」奴の指が拭う素振りで乾いた眦へ触れる。細く落ちた軌跡を撫で返せば、溢れたものは柔らかな微笑みだった。
【余裕無さげに 手を取ってみつめ合う】
その白い手は俺より一回り小さい。両の掌の中へすっぽり包み込めるのが愛らしく、首を傾げた奴の唇に思わず口付けをした。増長するほど掌はしっとりと吸い付き、目を閉じていても余裕を失くしていく様子が手に取るように分かる。柔らかく舌を解きながら見つめ合うと、それは先へ進む目配せへ変わった。
【余裕なさげに お姫さま抱っこ】
ハート型のチョコレートは奴と揃いである。青磁色の襟巻きが視界に流れると、不意に重ねられた唇がその欠片を寄越した。「お前にも心をやろう」冗談めかして微笑う奴を姫君の様に抱き上げる。「まだ足りねえ」余裕無く噛み砕いた欠片は甘く後を引き、寝台へ組み敷いた食べかけのハートに手をつけた。
(2月14日、第1回ベストバウト投票結果の扉絵衣装とバレンタイン)
【わざとらしく おでこにキス】
髪と仮面に隠れた奴の額は、真正面に触れるには少々工夫が必要だ。見えぬ場所ほど気になるもので、仮面の隙間から出来る限りの中心を目指してキスをした。「此方では駄目なのか?」奴が髪の分け目を指す。「真ん中は取りてえもんだろ」自らの額を態とらしく見せると、返礼の唇は思惑通り中心を捉えた。
【嬉々として 馬乗り】
白い衣に惑わされ、気付けば悪魔が腹の上を占拠していた。黒い爪は何処か嬉々とした様子で胸元を擽る。「穴アキにされんのは具合が悪りィなあ」「どうして欲しい?」寧ろ埋めてやりたいと、背骨に伝わせていた掌を骨盤まで下ろしながら言う。白い唇は美しく弧を描き、許諾を示す翼が二人を覆い隠した。
【からかって 顎を引き上げる】
全てを飲み干した喉が鳴る。「今日は随分と早い」その言葉は一見揶揄うようでいて大層満足げな口振りだ。「あんまりエロい舐め方しやがるからよ」その唇は艶かしく血の気を巡らせ、まんまと誘惑に乗せられたまま細い顎を引き上げる。しっとりと舌を絡めて身体の自由を奪うと、次の主導権は俺のものだ。
【飄々と 腰にまとわりつく】
聡明でいて飄々と腕を擦り抜けていく様は黒猫と見紛う程だ。次こそは逃すまいと纏わりつき、罠のように囲う両腕で奴の腰を捉えた。「構って欲しいのか?」当の本人には此方が猫に見えているらしい。腰を下ろして黒髪を食むと、膝の上の黒猫が揚々と口付けを返す。親愛の鼻先が、こそばゆく触れ合った。
(2月22日、猫の日)
【平然と 身体に触れる】
それは全て平然と行われる。頬を刺す北風が髪を乱した時、白い指先が緩やかに癖を直す。食事に夢中で気付かずにいた頬のソースは口付けで拭われる。傷を拵えると冷たい掌が痛みを和らげた。降り積もった小さな幸せは、やがて愛へと反映される。俺が唯一奴を壊すとすれば、色欲に溺れる為の理性だけだ。
【軽く うでまくら】
閨を共にする時は、必ず腕枕を買って出ることが癖になっている。「お前の腕の上では悪い夢を見ずに済む」奴はそう云って、二の腕に頬を擦り寄せた。「奇遇だな。俺もてめえのお陰で夢見が良い」間近の唇を軽く啄みながらクスクスと笑い合う。再び夢で逢瀬が続くようにと、きつく抱き締めて眼を閉じた。
【照れながら 尻を触る】
翼の付け根の羽毛と同様に、腰から伸びる燕尾も肌触りが良い。背を抱きながら長い毛足を梳くと、僅かに息を詰めた声の主は肩口へ顔を埋めてしまう。味を占めた指先で掻き分け、体毛が途切れる奥へと進んだ。翼は窄まり、角が跳ねる。捉えた熱は燕尾に守られ、俺だけに与えられているような心地だった。
ほぼ日刊グリウルSS*2022/02
2022/03/01