いちゃいちゃ10
*ほんのりR18要素ありお題をお借りし(TOY様より)ピクログで書き溜めた140字SSのまとめです
お題セットの順はそのまま、視点は都度表記しています
01 おはようのチュウ
side*6
石膏像に似た白い肌と彫りの深い目鼻立ちは虚圏の月夜によく似合う。ふと、濃く落ちた睫毛の陰影が背伸びをした。「起こしちまったか」柔く軽い口付けを送り、半身を起こす。月光が碧を宝石のように煌めかせると、手に入れた筈の独占欲は既に、その瞳の中で拘束されていた。寝台を抜けるにはまだ早い。
02 着せて。履かせて。
side*4
湯上がりの水気を拭き取って、丈の短い上着をその背に広げてやる。奴は機嫌良く袖を通すと、残る一足の靴下を我先にと手に取った。「それは俺の物だが」問答無用で抱き上げられ、辿り着いたのは椅子の上である。鼻歌混じりで爪先を包まれると、仕立て屋にでも来た気分だ。着衣を任せるのも悪くはない。
03 体を、ぴとっ
side*6
切っ掛けは小さな事で構わない。ソファを共有しながら、細い肩と隙間なく寄り添う。黒髪が応えるように頬を擽ると、毛先から仮面まで食まずにはいられない。膝元で捕らえた白魚がしっとりと絡み付く。唇は骨から肉へ。牙は仕舞い込んだ儘である。口付けで解れる身の味は、この腕に囲う時だけの贅沢だ。
04 抱き寄せる
side*4
虚圏の宵闇は全ての孤独な魂に寄り添い、何を与える訳でもなく包み込むものだ。三日月は必要なものだけを照らし、この身を抱き寄せる青空の色彩は保たれたまま二人きりの世界が完成する。俺は殊の外、空が好きなのだろう。翼を広げて獣の手を引く。果てなき夜空に、永遠の逢瀬を約束された心地だった。
05 寝ころぶ上に体を乗せて
side*6
俺の身体を下敷きに奴が寝そべっても、痩身は少しの負荷も与えず、甘える黒猫を抱くような安らぎで満ちる。髪に手櫛を通してやると、その唇が孔の無い胸元を啄んだ。気に入りの印は鋼皮を貫かぬまま深層へ届く。揺れる尾の幻視は下心の表れだ。掌の中で跳ねた腰により、無意識の情欲に漸く気が付いた。
06 指と指とを絡ませる
side*4
重なる掌と絡む指を握り返す。その直後、急激に距離を詰められたことで青空が翳り、降り出した恵みの口付けは夕立のようだ。しっとりと甘く気怠い湿度を保った儘、再び広がる晴天は気温の低下を許さない。「手は離すなよ」上がり続ける熱が愛おしいのだ。ギラつく牙が、揚々と詰襟の留金へ掛けられた。
07 まねっこ
side*6
奴の虚閃は小回りが利く。試しに自らの霊力を人差し指まで集中させるが、撃ち慣れた掌の威力には及ばない。「そういや指しか見た事ねえな」「広範囲では暴発の虞がある」白い掌に閃光が渦巻くや否や咄嗟に防御体勢を取る。「冗談だ」奴が手品のように握り潰すと、俺の無様だけが取り残されてしまった。
08 背中を足で、ツン。
side*4
奴の温かな唇の奥、牙を潜ませた口腔はより熱く、慰む源に高揚を分け与える。髄は甘く痺れ、空色は次第に霞んでいく。とうとう腰掛けていた寝台へ背を預けてしまった。辛うじて回した爪先で奴の背を突くと、丁度孔の縁を掠めたのだろう。耳の側で寝台が軋む。飢えた獣の眼光が、心臓まで突き刺さった。
09 昨日の夢で、
side*6
昨日、俺は雪を見ていた。さらさらと乾いた粉雪は、奴の黒い翼が緩やかにはためくだけで舞い上がるほど軽い。白に染まりゆく飛膜を食むと、粉砂糖を振りかけたように甘く溶けた。「この翼が欲しいのか?」「やけに美味そうな気がしてな」夏の夜の夢を正夢に変えるべく、雪の肌を持つ魔物を抱き寄せた。
10 「好き?」「好き」「愛してる?」
side*4
好いているかと奴が問う。好きだと答えると、次は愛しているかと青眼が距離を詰める。愛していると答えると、その違いが解るかと牙をちらつかせる。「此処は俺の宮だが、お前が居る事に疑念が無い」「野暮な質問だったぜ」奴は口付けを寄越すと、少年のように視線を逸らしながら云った。「俺も同じだ」
いちゃいちゃ10
2022/08/09