*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
て/手を、伸ばして

side*4

牙を潜めた温かな口腔が面映ゆさを丁度隠している。喘ぐばかりの声帯は制御を忘れ、甘やかに痺れた脳には青空だけが広がっている。刹那に飛び立とうとした白い鳩は忽ち豹の牙によって息絶えた。心地良い気怠さを振り払うのは惜しい。両手を伸ばし、俺だけを映す青空が宵闇と混じり合う瞬間を期待した。畳む


64

*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
つ/月の下

side*6

三日月の細い光の中を影が横切っていく。尖らせた探査神経を掻い潜るように接近するそれは、何の事はない、最も馴染み深い存在だ。「正面から来りゃア良いじゃねえか」風と共に絡む白い腕に柔く牙を立てる。「掛かった振りくらいしたらどうだ」皮肉めいた言葉さえ、戯れ合いの切っ掛けに過ぎないのだ。畳む


*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
ち/ちゅ。
キスする部位の意味を調べるとより幸せ

side*4

戯れは時として欲を助長する。蒼い前髪を弾くように口付けると、眦の仮面紋が機嫌良く上がった。「何処へでもくれてやろう」そう持ち掛けては、奴が示すまま耳から唇、喉笛から胸元へと愛でていく。腕を伝い腹の孔へ差し掛かった頃だ。「世話が必要だな」表れた効果は覿面で、慰める為の唇を濡らした。畳む


64

*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
た/太陽が沈むまで

side*6

本日付けの任務を終えた息抜きに、現世にて足を伸ばす。「春が近いようだな」天を見渡す碧の視線を追うと、奴が示す通り、時刻の割に青空が残っている。「じゃあ陽が沈む迄ならサボっても怒られねえな」引いた白い手が温かく感じられる程に風は冷たい。しかし、緩やかな夕暮れは麗らかに胸を弾ませた。畳む


64

*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
そ/染まれ

side*4

「染まっちまえ」笑みの隙間から牙が煌き、常夜が明ける。流れ落ちた蒼い長髪が世界を遮断すると、重なる唇は瞬く間に美しい夢の奥底へ叩き落とすようだ。奴が創り出す人の世に似た晴天は甚く心地良い。「まだ染まり切っていない」蒼い満月が嗤う。新しく塗り替えられた夜は、溶け合う色事に相応しい。畳む


64

*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
せ/性格不一致

side*6

破面は全て、胎児のような下級大虚から自我が芽生える中級大虚を経て進化するものだと思っていた。奴が云う幸福の記憶は、その軌跡とは真逆とさえ表現しかねるほど違う。「同族と同じ器官は胸糞悪りいもんか?」「いや、そうでもない」喰らう以外の役割を知ったと綻ぶ唇が、柔らかな口付けを寄越した。畳む


64

*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
す/するり

side*4

しなやかな体躯を持つ肉食獣は僅かな隙間も苦としない。態と空色の鬣ごと抱き締めてやると、奴は小動物のようにするりと潜り抜け顔を覗かせた。艶めく牙は上機嫌を示しており、俺の上腕や胸と擦れる感覚が甚く心地良いのだと云う。揃いの感情を寄越した返礼に、柔らかく寝かせた耳の毛並みへ口付けた。畳む


64

*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
し/周知の事実

side*6

奴が死神の主から絶大な信頼を誇る事は周知の事実だが、奴自身については思いのほか明かされていない。白磁の唇が綻ぶ事も、白魚が熱を宿す事も、この手で触れる時だけである。「誰もお前のようには接さぬからな」先走る感情を読み取られたらしい。絡む碧の視線は揺らがず、固い約束を誓うようだった。畳む


64

*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
さ/サニーデイズ

side*4

天蓋の内側に描かれた青空は監視下の証であり、反して容易く破れることから虚圏本来の夜空に敵わない。自然光の殆ど存在しない世界は今日も快晴だ。但し、それは雲の有無ではない。青空を指先に絡めると、奴が機嫌良く口付けを寄越した。闇の中でも迷わぬその色彩こそ〝空〟と呼ぶに相応しいだろう。畳む


64

*グリウル
『恋愛五十音のお題』
(創作者さんに50未満のお題 様 http://box.usamimi.info/
こ/こねこ

side*6

俺の肩に凭れ掛かっていた黒髪の主が珍しく居眠りを始めた。これを好機とばかりに、普段の借りを返す事にしたのだ。誤って揺すり起こさぬよう、その頭部をゆっくりと膝へ誘導する。まだ碧は姿を現さない。白魚と共に手遊びをしていると、奴が愛らしくその身を丸めた。猫呼ばわりの口実も此方のものだ。畳む


64

  • ハッシュタグの集計機能は無効に設定されています。